よくある質問と回答
97年03/20、99年04月、2010年03/12、08/28、2011年06/22日改訂


オーストラリア移住の方法
  Part 2 生計





第二の関門:生計


●ビザ用のスキルと生計用のスキル

 第一の関門:ビザでモノを言うのは自分のスキル、第二の関門:生計(就職)でモノを言うのも自分のスキルということで、この両者は密接に関連しているように見えます。が、ぜ〜んぜん関連してないとも言えます。

 例えば、僕の場合は弁護士スキルで第一の関門はクリアしましたが、それでここでメシが食えるかというと全然。まず資格のコンバートが出来ないので、またぞろ3年ばかり法学部入らないとならないです。それでも、資格が認められたところで、あるいは卒業したところで、オーストラリアは弁護士過剰で職もろくにないわ、あったところで「言葉の魔術師」とこちらでも言われている弁護士業務はネイティブを圧倒するだけの英語力が必要だわ、実際に独立営業しようと思ったら(日本でもそうですが)出身学校その他地元の地縁・血縁・営業力がモノをいうだろう、、、などなど。よくこれで永住権くれたもんだね、お役所仕事やねと思うくらいで(^^)。まあ、こっちも最初からそのつもりはありませんでしたからいいですけど、ここで申し上げたいことは、日本でのスキルが現地で役に立つかどうかは分からんということです。

 初期の頃一緒にAPLaCをやっていた福島の場合もマーケティングのプロでしたけど、日本のマーケティングとオーストラリアのマーケティングは全然違うので物の役には立たないそうです。また福島のダンナさんのラースはニューエネルギーの博士号を持ってるし世界でも指折りの技術者なのですが、オーストラリアにはその種の会社がないので宝の持ち腐れ。かつてウチでシェアしておられた日本人の方も大学院を出て某大手企業で液晶工学関係の仕事をされてましたが、これまたオーストラリアにはその種の産業がないので結局一般事務職やってます。4人とも高度技術で永住権取ってるにも関わらず、誰もその技術では生計を立てられないわけですね。この種の話は珍しくもないです。

 そうかと思うと、お医者さんなどの場合、世界共通のスキルがありますので、日本のスキルがまだしも現地で活かせると思いますが、その代わりオーストラリアも医師過剰なので、それでは職業点としては認めてもらえないという悲惨な状況がありました(ところが手の平を返したように「医者が足りないから優遇」とか言いだしているのは前頁に述べました)。繰り返しになりますが、ビザなんか、いかにその国の御都合主義で決められているかのいい例ですし、片やビザは取れるが仕事がない、片や仕事はあるがビザが駄目という具合にアンバランスになっているということでもあります。

 このように、現地での生計を考える場合、日本でのスキルを一旦チャラにして考えた方がいい場合も多々あるでしょう。一部の手の職系のスキルで現地市場でウケるもの以外は、まず通用しないくらいに覚悟しておいた方がいいです。とりあえず英語力がなければそもそも面接まで漕ぎつけられませんし、お客さんから金も取れません。同じ分野でも専門用語を一回全部英語に直して覚えないとなりませんし、電圧が240ボルトとか技術環境も違いますし、消費者の嗜好もまたちがうでしょう。

 ですので、日本で培われたスキルはスキルとしても、そのスキルをビザ用に活用するか、就職用に活用するかは、ハッキリ局面の違う問題だということは認識しておいた方がいいと思います。そこはもうスパン!と割り切ってください。


「日本人」というスキル


 ミもフタもない言い方をしますならば、現地在住日本人を一個の労働力として見た場合、最も市場価値のあるのが「日本語能力」「日本人であること=日本リテラシー」ではないかと思います。つまりオーストラリアの企業が、日本市場を狙ったり、日本の顧客とコンタクトする場合の職域ですね。あるいは、日系企業の現地採用とか。結局それが一番大きいんじゃないでしょうか。ちなみに日本語教師ですが、これはもう供給過剰でよほど田舎にいくか、よほどラッキーでもないかぎり難しいと聞きます。ないことはないそうですが。

 日本語学力だけでなく、日本と繋がりがあることが就職&ビジネス上の価値があるという場合は他にもいろいろあるでしょう。それはもう留学業界にせよ、観光業界、日本への輸出入業にせよ、早い話がこのAPLaCだって「日本市場」を相手にしてるわけで、日本が沈没しちゃったら皆さんと一緒に共倒れになるわけです。

 しかし、母国語能力や母国との繋がりが労働市場で売りになるというのは、すごいラッキーなことです。これはもう日本の経済力の恩恵ですね。余所の国から来たら、その国の母国語喋れても職なんかロクにありませんもん。そういえば、どこかのサイトだったかで、「日本はもう駄目だからオーストラリアに移住しよう」とか呼びかけてる所がありましたが、本国がダメになったら海外に行ってもダメです。日本が落ち目になればなるほど、海外における日本人労働者の需要は減りますし、現に減ってます。日本語教師職でも、日本のプレゼンス(存在感)が薄くなれば誰も日本語学ぼうとしませんでしょうしね。というわけで、そこはもう密接に関連していると思います。

 ----と昔書いたのですが、悪い予感は当るもので、その後日本経済が沈下していくにつれ、こういった「日本スキル」の市場価値はどんどん下がっています。多くの在外邦人は、その国と日本との接点でビジネスをする場合が多いです(僕もまさにそう)。日本人観光客をターゲットにした観光旅行業、日本企業の現地進出に関するビジネス、滞在日本人を対象にした食材店や日本料理店、美容院、などなど。大本となる日本からのお客さんが減れば大打撃を被ります。特に不況になって真っ先に削られるのはこういった海外費用ですから(「海外なんか行ってる場合か」と)、その影響はある意味では日本以上にキツいかもしれません。

 そうなってくるとこれまで日本人をメインターゲットにしているよりも、今や日本人よりもはるかに金持ちになったオーストラリア人、そして勃興してくる中国人やインド人相手にビジネスをやった方がずっと効率が良くなるわけで、日本料理屋さんも今では殆どが日本人以外のお客さんをメインターゲットにしてますし、シドニーに進出している紀伊国屋さんだって、売り場フロア面積のうち日本書籍の占める割合は非常に少ないです。

 ワタクシゴトで恐縮ですが、僕のAPLaCなんかその意味でキビシイですよね。英語学校紹介とかオーストラリア現地生活サポートとか、地元オーストラリア市場には全く不要ですからね。あいつら英語喋れるし、僕以上に現地のこと知ってるし。わはは、やばいぜ。でも、こんなの考え方一つですよ。日本にいたら日本が不況になったらそれきりですが、オーストラリアにいたら、日本よりもはるかに肥沃で成長性の高いマーケットが目の前にあるわけです。というわけで、完全に業務内容を変えて、APLaCなんかもう止めて(ってもともと趣味HPだからやめないけど)、ビジネス的には地元オーストラリア市場にどうやって切り込んでいくかを考えるべき時期に来ていると思います。

 それにですね、まだそこまで達してないけど、日本がこのまま沈没していって完全に没落したらですね、日本よりも海外の方が遙かに容易にお金が稼げるということでしょ?既にオーストラリアの最低賃金レベルは日本よりもずっと高いんだし。いわば自動的に「海外出稼ぎ」状態になるわけで、ここで頑張って働いて、日本に帰ったら温泉宿で豪遊しようかな、とか。まあ、そんなに上手くいくわきゃないですけど、ただ、マーケットが二つ以上あるというのは、AがダメでもBがあるということで、粘り強い環境になりうるってことです。

 あ、それと「外国における日本市場」というのもあるんですよ。オーストラリアにおける日本人の数や比率はとても少ないのですが、それでも在住日本人を対象にしたビジネスは山ほどあります。現地の日本人コミュニティ雑誌やサイト(JAMS(別窓)やCHEERS(別窓)など)をみれば、その種のビジネスの状況がよく分かるでしょう。今はあまりにも絶対数が少ないので、日本人同士でお客さんの奪い合いのような熾烈な競争がありますが、これで在住日本人が増えればパイがデカくなります。実際、イタリア人コミュニティやチャイニーズなど絶対数が日本人の数十倍あるグループでは、英語も何も喋れないけど生きていく道はそれなりにあるのですね。ああ、羨ましい。

 それに日本人が増えれば、どうしても経営的にオージーの舌向けに味を変えないとならない日本料理店も、日本人の舌に合わせた本物の日本料理を出してもやっていけるわけで、イチ消費者としても非常にうれしいのです。だから、皆さん、オーストラリアに来てください。出来れば僕のいるシドニーに来てください(笑)。もう、ほんと、こんなもっともらしい解説ページの作者としてではく、イチ在住日本人の本音としていえば、「ゴチャゴチャ言ってないで、とっとと来んしゃい!」って大声で言いたいですねえ。皆が来れば皆の成功率があがるのだ。

●世界のオキテ


 というわけで、「日本との関連」という特殊枠を外せば、あとはもう自分の技能が世界市場でどの程度評価されるかという話になります。うまいこと評価してくれるならばいいですが、あまりアテにせず、基本的にはゼロからスキルを培っていくくらいに思っていた方がいいのかなあとも思います。領域にもよりますが、それだけ言葉やシステムの違いは過小評価すべきではないということです。

 でも、これはそんなに絶望的な話ではなく、どこの国から来た人も皆さん同じように頑張ってはるわけで、いわば当たり前の話です。母国で大学教授やってたって、違う国行ってその国の言葉ができなかったりニーズがなければスーパーでダンボール箱整理したりするもんです。それが世界のオキテだと思います。真に有能だったら、日銭を稼ぎ、語学を身につけ、人々に信頼され、新たなスキルを身につけたり、自分のスキルを認めさせるなりしてのし上がっていくでしょう。裸一貫、徒手空拳でのし上がってナンボでしょう。

 現地で成功している実業家も、よくよく聞いてみると移民してきて頑張って地歩を築いたというケースはよく聞きます。特に移民が集中するシドニーではそうですが、通りに並ぶそこらへんのお店や事業など、移民の人が経営しているケースがかなりあるでしょう。というよりも、イギリス系でない50才以上の人は基本的に全部移民です。タクシーの車内で「ここで生まれたの?」「いつこっちに来たの?」という会話もありふれたものです。


 自分が「外国人労働者」として見た場合、オーストラリア社会は、求職や差別などの障害は日本社会よりもずっと少ないと思いますし、誰が何をやっても(やってなくても)干渉されないし、鬱陶しい談合その他の非関税障壁も少ないし、労働流動性が高いので求人それ自体は年中あるし、転職や大学に入り直したりというフレキシビリティなど、いずれも日本に比べればかなり自由であると言えるでしょう。

 また何か起業をするについても、「友達何人かとビジネス始めた」なんて話はありふれていますし、何か思い付いたらその日からでも電柱に張り紙したりポストに広告ビラ撒いたりすればいいです。それで巧くいくかどうかは才覚と運次第でしょうが、会社も2ドルで設立できるし(実際には手続代行料がかかるけど)。ちなみに貼り紙広告は沢山あります。シドニーに来られたら気をつけて見ておられたらいいですが、電柱、スーパーマーケットや、本屋、大学、コインランドリーなど至るところに「シュアメイト募集」「○○教えます」「車売ります」の類の個人広告が貼られています(貼るためのスペースがある)。地元のコミュニティ誌などにも満載されています(余談ですが、恋人募集コーナーは笑えます。よくまあこんなに自分を誉めれるなあと思うくらいで、英語の勉強方々いかがですか(^^))

 ですので、ゼロから始めるといっても、別に不幸でも何でもなく、世界共通基準で頑張れば良いということですね。他の国の連中ができて日本人が出来ない筈はなかろうに。

 自分を省みて思うのですが、日本人の場合、将来の生計に対する安定的な保証を求める意識が、時としてちょっと強過ぎるのかもしれません。あるいは日本という社会は、将来設計を立てやすい(ような気にさせてくれる)社会なのかもしれません。ですので、日本におられる皆さんとしては、こんな「頑張ればいいじゃん」的なお気楽なものを読んでも不安は拭い切れないでしょうが、一年もこちらに暮らしていたらかなり感覚も変わってくるのではないでしょうか。人それぞれでしょうが、僕らも随分と楽天的になったりしました。最初はもっとシンコクに考えたりしたもんです。

 ところで、なんでこんなにしつこく言うのかというと、例えば「オーストラリア現地の知人のところに就職できそうだから移住する」という「計画」話を聞いたりしますけど、正味の話、その程度の生計の見通しでは、移住を決意するかどうかに際しては大した基準にならないと思うからです。なぜなら、その知人と喧嘩したり、その事業計画が変更になっただけで、一瞬にしてこの移住計画は崩壊してしまうでしょ?そんなんでいいんか?と。

 ですので、基本的には現地の労働市場でやってけることを基本に考えておいて、個別的な就職話の一つや二つ流れてもどんどん次の手を打っていけるようにしておいた方がいいと思います。逆にいえば、現地での採用話の有無は、移住を決意するにあたってそんなに大きなものではないし、その種の話がないから駄目だなんて思う事もなかろうということです。目先の安定を求めすぎてあとで大きく転ばないように、ということです。


 さて、こんな「心構え」的なことばかり書いててもラチが明きませんので、とっとと次にいきます。「ビザ」と「生計」の両面を見据えて、どのように戦略を立てていくかという話にうつっていきたいと思います。 



PS:なお、現地での求人状況がどうなっているかですが、世の中便利になったもので、現地で新聞読まなくたってインターネットでほぼフォローできます。便利なところでは、オーストラリアの求人用ネット或いはクラシファイド・アド(求人の他、売ります買いますなど募集広告集)をあつめたリンクページがあります。検索付きのサイトもありますので、ご自分の職域あるいは”japanese”あたりで検索すると、求人状況や年収など大雑把な感触が掴めるでしょう。興味のある方はご覧ください( 別窓で表示させるにはこちらをクリック)。久しぶりに今やってみたら、大分減りましたね〜。シェフとかメカニックとか、中には「日本車」ということでJapaneseにひっかかってるだけだったりして。


→次(移住Part3)に進む


参考(就職・仕事に関するページ)

「シドニーで仕事を探す方法」

オーストラリアで実際日本人が就職できる職種とその給料について(10/08/28)

◆仕事に関するエッセイから (古いコンテンツですが本質は変わってないと思います)
オージーの仕事観を探る(96/12/1)
下手な英語で仕事するコツ(97/5/29)

◆「海外で働く」ということに過剰な幻想を抱かないために
ESSAY 278/「外国人労働者」とは我々のこと (06.10.02)

◆以下はワーホリの部屋語学学校研究のコンテンツですが、参考にはなると思います。

特別寄稿体験談 (by Kさん)/アルバイト先との給与支払トラブルを労働委員会を通じて解決した実例レポート(2006年12月1日)

◆コラム/間違いだらけの留学&ワーホリ生活
 7.ジャパレスで働いても英語が伸びない?
 8.タックスリターンで税金が返ってくる?




オーストラリア移住について INDEX
第一の関門:VISA
ビザの原理原則/技術独立移住永住権/頻繁に変わるビザ規定/専門業者さん/その他の永住権/永住権以外の労働できるビザ
第二の関門:生計
ビザ用のスキルと生計用のスキル/「日本人」というスキル/世界のオキテ/オーストラリア仕事探しサイト内リンク
戦略と戦術(その1)
フォーマット設定/欲望のディレクトリ〜永住権だけが全てではない、手段と目的を明瞭に意識すべし
戦略と戦術(その2)  よくある基本パターンと組み合わせ
永住権優先でいくか、ステップアップ方式でいくか/「はじめの一歩」をどうするか/利益衡量/ストレート永住権の場合の具体的戦略/ステップアップ方式の場合の具体的戦略〜意外と使えるワーホリビザ/ダメだった場合〜あなたにとっての「成功」とは何か?/先のことは分からない/

関連&参考

今週の一枚ESSAYより
 「”海外”という選択シリーズ」 過去回INDEX

ESSAY 452/(1) 〜これまで日本に暮していたベタな日本人がいきなり海外移住なんかしちゃっていいの?
ESSAY 453/(2) 〜日本離脱の理由、海外永住の理由
ESSAY 454/(3) 〜「日本人」をやめて、「あなた」に戻れ
ESSAY 455/(4) 〜参考文献/勇み足の早トチリ
ESSAY 456/(5) 〜「自然が豊か」ということの本当の意味 
ESSAY 457 / (6)〜赤の他人のあたたかさ
ESSAY 458/(7) 〜ナチュラルな「まっとー」さ〜他者への厚情と冒険心
ESSAY 459/(8) 〜淘汰圧としてのシステム
ESSAY 460/(9) 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか(1)
ESSAY 461/(10) 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか(2)
ESSAY 462/(11) 〜日本にいると世界が遮断されるように感じるのはなぜか 〜ぬくぬく”COSY"なガラパゴス
ESSAY 463/(12) 〜経済的理由、精神的理由、そして本能的理由

ESSAY 519/放射能→海外というトコロテン式思考について - Lesser of two evils principle



★そうだ、オーストラリアに行こう?!〜時代が変わった オーストラリア留学/ワーホリ/移住の新しい局面

 
上から目線から下から目線へ〜経済状況の逆転、オーストラリアの物価高騰、本当は日本だってそうなるはずだった、コンセプトの根本的な転換を、@、お金を使う場所→稼ぐ場所、A、スキル価値の上昇、B、まずは出塁 ベルトコンベア型→ビリアード型、C、感動率上昇、実例、傾向と対策



★2011年世界経済の動向とオーストラリアへの留学、ワーホリについて

〜世界経済危機とはなにか、第一次ドミノから第三次ドミノ、オーストラリアにおける影響(語学学校や留学、ワーホリや生活面、永住権やビザ)、どう対処すべきか(円高メリットの確保、渡豪すべきか否か)、日本の市場・雇用縮小と海外シフト


★ワーホリ実戦講座(1-1)日本人ワーホリをとりまく環境変化